AIは亡き作家の新作を作成することができるのか?
連日話題のAIイラスト・AI絵画で皆さん色々実験や作品を生み出していることと思います。
昨今ではAI絵師なるものを名乗る人まで現れ、クリエイティブの価値や本質が問われている現状です。
そんな中、今回はAIを使って亡き有名作家が新作を描いたら?作風を極限まで似せることができるのか?などのテーマでやっていきたいと思います。
利用するAIは『Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)』
ピックアップする作家は以下3名
- ズジスワフ・ベクシンスキー
- ジャン・ジロー
- アルフォンス・ミュシャ
いずれも絵に特徴があり、見れば一発で作風がわかるものばかり
AIがどれくらい近いものが生成できるか非常に楽しみになってきます。
最初に簡単に作家の説明と作品と共に紹介していきます。
それではいってみましょう
ズジスワフ・ベクシンスキーの紹介
主に死、絶望、破損、廃退、廃墟、終焉などをモチーフに扱い、不気味さや残酷さと同時に荘厳な美しさを感じさせる画風が特徴。独特の世界観から多くの支持を得た画家である。作品自体は退廃的で「終焉の画家」と呼ばれるほどだが、彼自身は人当たりが良く少し内向的で、人との会話をよく楽しんだとして知られている。だが、政治不信、マスコミ嫌い等があり、普段は隠居のように暮らし制作に没頭しており、他の芸術に触れることも嫌ったため、ポーランド語以外は話さず、ポーランドから出ることも生涯なかった。
彼の作品にはすべてタイトルがついておらず、作品の理論付けや詮索を非常に嫌った。作品を描く際は、常に大音量のクラシック音楽をかけており、どこにいくにもクラシック音楽を共にしていた。ベクシンスキーは、作品をバロックとゴシックと技法を分けており、最後5年ほどに手がけた作品はほとんどがゴシックである。1990年以降は、それらに加えて、コンピューターグラフィックスで写真の加工による作品も手がけており、死ぬ間際まで関心を持ち制作をおこなっていた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現在のダークファンタジーゲームや映画等々、多方面に多大な影響を与えたといっても過言ではない作家の一人であるベクシンスキー。
よくH・R・ギーガーと比較されがちだが、ベクシンスキーは乾いた悪夢と言ったらいいでしょうか・・独特の清潔感と恐怖が漂う作風が多いように感じます。
ズジスワフ・ベクシンスキー風にAIに描かせてみた
どうでしょうか?作風としてはかなり近いのではないでしょうか?
ちょっとファンタジー色が強くなってしまいましたので本物とはテイストが違いますが、『影響を受けました!』という感じの絵にはなってるのではないでしょうか?
そのままでゲームのコンセプトアートとしてもいけるレベルで雰囲気がありますよね。
ジャン・ジローの紹介
ジャン・アンリ・ガストン・ジロー(Jean Henri Gaston Giraud、1938年5月8日 – 2012年3月10日)は、メビウス(Mœbius)のペンネームでも知られるフランスの漫画家(バンドデシネ作家)。40年にわたって続けられた西部劇漫画『ブルーベリー』シリーズでは「ジャン・ジロー」(ジル)を、より自由な筆致でSF・ファンタジー作品を手がける際には「メビウス」を用いた。特に後者の活動で国際的な名声を得ており、エルジェ以降もっとも重要なバンドデシネ作家とも言われている[1]。大友克洋、宮崎駿、谷口ジローなどへの直接的な影響を通じて日本の漫画界へも多大な影響を与えた。『エイリアン』をはじめとして、多数のSF映画にもデザイナーとして関わっている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
続いてはメビウスことジャン・ジロー
漫画家ではあるが1枚絵の完成度としてはイラストレーターと言ったほうが近いかもしれない。
AKIRAの大友克洋や、風の谷のナウシカなどジブリの宮崎駿が影響を受けていることでも知られる偉大な人。
個人的にはドラゴンボールの鳥山明も作風(特に漫画の表紙)には影響をうけているのではないかと思います。
ジャン・ジロー風にAIに描かせてみた
どうでしょうか?
若干気持ち悪い要素が多くなってしまいましたが、テイストは結構近いのではないでしょうか?
元々世界観が独特の作風であるが故にAIに指示するための言語化が難しいです。
後で説明しますがある程度簡単に似せることは可能ですが、細かい要素に関してはうまく呪文を入れるしかありません。
しかしながらレトロなアメコミファンタジーの雰囲気はしっかり出ています。
アルフォンス・ミュシャの紹介
アルフォンス・マリア・ミュシャ(Alfons Maria Mucha、1860年7月24日 – 1939年7月14日)は、チェコ出身でフランスなどで活躍したグラフィックデザイナー、イラストレーター、画家。「ミュシャ」という表記はフランス語の発音によるものであり、チェコ語の発音を邦訳すると「 ムハ 」になる。
アール・ヌーヴォーを代表する画家で、多くのポスター、装飾パネル、カレンダー等を制作した。ミュシャの作品は星、宝石、花(植物)などの様々な概念を女性の姿を用いて表現するスタイルと、華麗な曲線を多用したデザインが特徴である。イラストレーションとデザインの代表作として『ジスモンダ』『黄道十二宮』『4芸術』などが、絵画の代表作として20枚から成る連作『スラヴ叙事詩』が挙げられる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
誰でも一度は見たことがあるお洒落なイラストの代表格であるミュシャ
現役当時は日本がまだ明治・大正時代だったのが非常に驚くところ
この作風は現在の漫画やアニメの表紙やオープニングアニメーションに多大に影響を与えているといっても過言ではない。
アルフォンス・ミュシャ風にAIに描かせてみた
いかがでしょうか?
ストレートにやると似ているへたくそな絵になってしまいますので、他の作家同様に少々不気味な要素を入れて作成してみました。闇のミュシャという雰囲気です。
やはり特徴は背景の植物の装飾パターンですね。
オリジナルと違って綺麗な曲線は描けていないので、トゲトゲしい印象を受けますが、どうにか似せようと頑張った感じが見受けられます。
この作家のAI作品の場合は、作風が強烈すぎるので逆にどうやって似させ過ぎないかが難しかったです。
Stable Diffusionで有名作家風に作成する方法
以上3名の作品の紹介でしたが、それではどのようにすればこういった似た作風が出せるか説明します。
実はものすごく簡単です。それは・・・
『作家の名前を入力する』です。
つまりAI生成時の呪文(単語)に作家の名前を入力するということです。※もちろん英語で
その点、有名画家などは作品から作風まで認識されているのか、作家名を入れるだけで特徴を色濃く残したまま生成をしてくれるようです。
例えば『ドラゴン』という単語だけで作成した場合、以下のような画像ができます。
まぁドラゴンですが、なんというか・・ダサいですよね。
よく言えば太古の壁画風ですが、センスが古くてどうにも良いとは言い難い・・
そこで今度は『ドラゴン,ズジスワフ・ベクシンスキー』と入力した場合はどうなるか、こちらを見てください。
ベクシンスキーの要素はあまりありませんが、突然殺意むき出しのとんでもない異形のドラゴンが出来上がりました。
陰影も非常にメリハリが効いており、深みのある作画にしてくれました。
続いては『ドラゴン,ジャン・ジロー』と入力してみましょう。
さてどうなるか・・
四肢はめちゃくちゃですが、80~90年代のダンジョンRPGのような作風のドラゴンが出来上がりました。
よく見ると作風というより、色使いを一生懸命似せたような印象があります。
見た目はおかしいですが、ぱっと見は王道のドラゴンという感じでカッコいいです。
それでは最後にオチみたいになりますが、ミュシャの場合はどうなるでしょう?
『ドラゴン,アルフォンス・ミュシャ』
美しい壁画のような女性モチーフが多いミュシャにドラゴンを描かせるとどうなるか・・?
想像もできません。それでは見てみましょう。
なんとドラゴンを描かないという結果です。
意地でも女性を描くという強い意志すら感じますね。
ドラゴン要素はどこへやらという雰囲気ですが、一応色味がダークトーンになっているのでこれでも頑張ったのかな?
この結果からしてミュシャの個性が強すぎてAIではうまくアレンジできていないことが伺えます。
これは面白い結果ですね。
亡き作家の作品をAIに描かせてみた。まとめ
思った以上に特徴を捉えていたので、作品全部面白かったですね。
AIで作品を作るときにとりあえず『ベクシンスキー』を追加しておけば、コンセプトアートのような深みがでますし、『ジャン・ジロー』を入れたらレトロファンタジーな雰囲気が出ます。
ミュシャといれたら全部ミュシャになってしまう結果になったのが面白いところ
以上の件から個人的に思ったことは
いくらでも贋作が量産できてしまうため、本人の作品だと誤認する事案が発生するのではないか!?
ということが懸念されます。
インスピレーションやコンセプトの材料として扱うのであれば有用だが、AIの発達により芸術本来の価値や評価が変わってしまう世の中にならないか不安を覚えてしまいます。
数年後には新しい絵描きが生まれなくなり、過去の作家の新作が乱立する世の中になってしまうのではないだろうか
危機感を感じる反面少し楽しみではある複雑な感じです。
ではでは
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