最終9巻も発売して完結した、漫画「人形の国」のネタバレと回収されなかった伏線に関して考察を交えて解説とレビューをしていきたいと思います。
弐瓶勉先生の名作「人形の国」が9巻にして大急ぎで完結してしまいましたね。
最終の畳方がかなり駆け足だったので打ち切りでは?と騒がれているようですが
物語の根底の部分の風呂敷を畳んだので過程はどうあれしっかり完結まではいってよかったと思います。
若干9巻発売時に加筆があるんじゃないか・・・と期待してしまいましたが、特になかったのは残念です。
今回は物語の根底の部分の解説と作中意味がありそうで結局回収されなかった謎に関して考察していきたいと思います。
『地底世界』とはなんだったのか?【ネタバレ注意】
実は「地底世界」という言い方をしていますが、巨大なWEBのサーバーみたいなものが実態でした。
地底世界では人間は実態を持たずデータで保管されているので云わば不死の状態且つ、データ上の「人工現実空間」で過ごすことができるので何不自由のない楽園ということがわかりました。
しかも地表の情報を常時収集しているためこの世界ができた時からの個体情報もすべてが保存されているらしい。
しかし驚くべきはこの「地底世界」に保存されている情報はすべて地表に実体化させれるということ。
つまり地表で生身が死んでも地底世界のデータがあれば死ぬことはないし再び地表に復活することもできるという構造なのだ。※これを復活と言っていいのかわからないが
この世界の本当の死は「地底世界」でデータを消されるということで、作中唯一この制裁にあったのはカジワンのみである。
地表の環境を考えても「地底世界」に居座るほうがいいに決まっているが、昔の人類の一部が
反対を押し切って出て行ったらしく時を経て帰ってきたいとか勝手にもほどがあると地底側から言われてもしょうがないと思う。
恐らく生まれた星で生身で還ることこそ人類の目指す場所とか考えた集団がいたのではないかと想像できる・・・
かなり特殊な設定ですが、弐瓶勉ファンの方なら特に驚くこともない設定かなと思います。
古参ファンはわかるかと思いますが初期の代表作の『BLAME!』がまさにそういった世界観でした。
『BLAME!』ではネットの世界がどういった状態か最後まで語られることもなく、アクセスする条件である「ネット端末遺伝子」も結局謎のまま完結したため今でもミステリアスな作品に仕上がっている分、「人形の国」はわかりやすい部類ではないかと思います。
回収されなかった3つの伏線に関して
作中意味ありげで結局最後まで語られなかった謎が2つあります。
・転化後の空のコード保管
これに関しては色々解釈はできますが、おそらく作品の完結のスピードから言って言及できなかったのがオチとは思いますが想像できる範囲で考察したいと思います。
【謎その1】タイターニアの3つの願いとは!?
終盤仲間のワサブが帝国につかまってエスローが危険を顧みず助けようとした際に、タイターニアがびっくりするくらい高圧的な態度になり「3つだけ願いを聞くことができる」ということを言います。
結局運よくワサブを捕獲した帝国側が近くに出現したので未遂に終わりましたが、これはどういうことだったのでしょうか?
恐らくこれはタイターニアが地底のみならず地表も含めたアポシムズ全体の人類を守るように設計された権限があることからもわかるように、地表で行使できる力の決められた回数のことなのだろう。
あくまで地表で起きた問題は地底側はタイターニア自身の介入以外では事を起こさないスタンスのようなので恐らくこの願いで地表にあるものは何でも消したり出現させたりのできるくらいバランスブレイカーだと想像できる。
この理屈だとエスローがスオウニチコを消してと言えばもしかしたらできたのかもしれない・・
後々で地表と地底の理屈がわかった上だと、この3回の回数制限のほうがAMBなんかよりよほど脅威だと思うが・・・
ちなみにカジワンが作り出したタイターニアの模造品には、本物と同じく適合率の低い転化を成功させる能力あったが地底と繋がっている描写はなかったので完全なイレギュラーなものだと思われる。
最後カジワンにデータ消去の告知をしたのがタイターニア本人なのか模造品なのかは不明・・
この願いが作中1度でも利用されて、筈なにかのペナルティなどあればもっと面白かったかなぁと個人的には妄想しています。
【謎その2】転化後の空のコード保管に関して
同じく作中後半、ケーシャが転化後の空コードをお守り代わりに持っていることを知ったタイターニアはそれを大事にもているように促すシーンがあります。
転化やコードに関しては詳しくは言及されていなかったので気になった人は多いシーンかと思います。
最終的にコードに関しては地底世界の産物ではなく、地底世界の実体化の技術を用いて地表側の人類によって作られた技術ということが判明します。おそらくコードで地底の人工現実世界の一部を不正に地表に実体化させるものだと思われる。
ではなぜそれをタイターニアが大事に持っているように説いたのか?
結局最後まで語られませんでしたが、例えばこういった用途があったのではないだろうか?
・転化者の死亡時にコードが未使用状態に戻る
・地底に転送された際の記憶の保管装置のようなもの
・コードに情報を戻し転生者から通常の人間に戻れる
・地表側での肉体のバックアップ装置
・実はコードは再利用できる
以上のことが考えられるが、正直地底世界の万能性を考えると人類側の不正作成したコードがそこまで有用なものとして機能するとは思えない・・・
これに関してはさすがに途中で没にした案なのではないかと思われる。
可能性があるとすれば、作者の過去の作品の『BLAME!』で、後半肉体を失ってメモリだけの存在になった相棒ができるが、もしかしたらそういった類のオマージュなどではないかと推測される・・・
正直「転化」に関しては作中のメインと言ってもいいものだっただけに、人類側の地底技術の応用だけで終わらしてほしくなかったのが悔やまれる。人形病もそれの弊害でできたとしか語られていない。
残された謎に関してまとめ
二瓶勉の漫画は雰囲気は抜群にいいので『BLAME!』のようにほとんど語らなければ独特の魅力が現れるが、今作のように微妙に語ってしまうと矛盾というか腑に落ちない解釈など出てきてしまう気がする。
『シドニアの騎士』でニッチな作家から大衆向け作品への昇格を果たした故の読者とのすれ違いかもしれない。
散々打ち切りではないかと騒がれているが、固定のファンがいる現状だと恐らく作者が意図的に終わらせたのが濃厚かと思います。
過去もラストの1話あたりで急に世界の説明で終わらせることはよくあったので平常運転と言えば平常運転なのだが・・・
もしくは最近またアニメ新作の情報がでているので、そちらに作者が力を入れるためかもしれない・・
これで『人形の国』のアニメ化だったら本末転倒だが、二瓶勉の次回作には期待したい。
ではでは
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